啓明舎(けいめいしゃ)|難関中学受験名門/難敵への挑戦

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難敵への挑戦

懇意にしている神奈川の塾の先生から聞いた話である。

教え子のA男は、2月1日にB中学、2日にC中学を受験したが不合格、3日の受験校もまさかの不合格となった。4日の夜、母親が「1日はやっぱり(第2志望校の)D中から入った方がよかったね」と話したら、ふだんは母親に口答えすらできなかったA男がこう答えたという。

「僕はB中学とC中学を受験出来て良かった。あんなに面白い問題を勉強することが出来たんだから。結果は悔しいし残念だけど後悔しない。公立に進学することになっても僕のゴールはここじゃない」

5日朝D中学の3次試験の激励に行った塾の先生に「私、息子に負けちゃいました」

と、母親は目に涙をためながら、でも少しうれしそうに話したという。

中学受験の目的は、高い目標を掲げて努力することを通して、知的な成長と精神的な成長を遂げることだと思っている。

B中学とC中学の入試問題はそれぞれ東京と神奈川で最高峰といえる難問ぞろいだ。自分の力は及ばなかったけれど、「敵」の強さを認めた上で「面白かった」と言えた。それは「悔しまぎれ」かもしれないが、別に悔しくたってかまわない。それが泣きそうになりながら精一杯強がって言った言葉だとしても、むしろその強がりが、成長の証しなのだ。

ある格闘技のチャンピオンはこう語っている。「弱い相手と百回闘って勝っても、強くはなれない。ありえないくらいに強い相手にボコボコにされて、そこから立ち上がることを繰り返して、はじめて本当の強さを知ることができるのだ」

A男は3次試験で、無事、第2志望のD中学に合格した。もし1日からD中学を受験していたら、あの涙は流さずにすんだかもしれない。その合格を自信に、もっと難関の中学に合格できたかもしれない。でも私は、A男は最高の受験を経験したと思う。それは6年後の大学受験で、間違いなく証明されると確信している。